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ロシアの南 近代ロシア文化におけるヴォルガ下流域、ウクライナ、クリミア、コーカサス表象の研究

中村唯史(編)

山形大学人文学部叢書5:2014年3月

〔内容紹介〕

 本書の対象地域がロシア帝国の版図に入ったのは18世紀後半-19世紀前半であり、ロシアが近代に足を踏み入れ、西欧に比して曖昧ながらも民族意識が芽生えて、「国民文学」が成立した時期と重なっていた。「自己」意識を持ち始めたロシア人の前に、「南方」は最大の「他者」として立ち現われた。
 その一方で「南方」はロシアの文明的・精神的な原故郷とも見なされた。キエフ・ルーシの故地ウクライナはロシアの源流と位置づけられ、コーカサスはノアの方舟やプロメテウス伝承の地、黒海沿岸は古代ギリシャ文化の痕跡を宿している。ロシア帝国の南方進出は、思想や文明論では、これら旧約的な世界や古代文化への回帰、自文化の源泉への遡行とも表象された。
 ロシアの文明論的視座の中で「南方」がどのように定位されたか、ロシア/ソ連の影響下に近代を成立させた「南方」の人々が、自らの立ち位置をいかに読み換えていったかを考察した8編からなる論文集。

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