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観光資源の有効活用と中心市街地の再生

山田浩久

山形大学人文学部叢書4:2014年3月

〔内容紹介〕

 平成25 年度の大学COC 事業「地(知)の拠点事業」として山形大学の「自立分散 型(地域)社会システムを構築し、運営する人材の育成」事業が採択され,個別分野の研究として本研究が認可されたことは,地方都市の観光政策に当該地域の大学が参 与していく大きなきっかけになったと考える。地方都市の活性化に必要な観光は着地型観光である。それは,地域資源の掘り起こしに始まり,広域からの観光客のニーズ に対応しながら,地域全体の経済活性化を目指すものであり,社会環境や自然環境のアセスメントも多岐にわたる。着地型観光を考えることは,個々の観光客の満足度を 高めることや彼らを送り出す業種の利益を増大させることを起点とする発地型観光を考えるよりも,はるかに多くの視点が必要であり,個々の研究者が対応しきれるもの ではない。「課題解決に資する様々な人材や情報・技術が集まる、地域コミュニティの中核」として存在する大学が組織的に携わることによって,はじめて着地型観光の 研究は可能となり,その成果を地域に還元できると思われる。今後,同事業の進行とともに様々な分野から観光政策研究がなされ,体系づけられていくことだろう。
 本書は東北創生研究所のモデル都市研究として,筆者が2012 年から行ってきた観光動向調査の延長線上にあり,足掛け3年にわたる調査から得た知見をまとめたもの である。内容的には未だ中間報告の域を出ないが,ひとまず上山市を訪れる観光客の行動パターンを類型化することができたことで,同市の地域性に基づく観光政策の方 向性を示すことができたのではないかと考える。とくに,観光動向調査から導き出された,「若年者の行動パターンが,今後の上山観光に新しい動きをもたらす」という 仮説が,学生参加型の現地調査によって確認されたことは非常に大きな意義がある。 個々の地域の特性を理論よりも現地での観察や体験によって明らかにしていく「地誌学」という講義を利用しての現地学習は,平成24 年度に行った東松島市の視察に続 き2回目である。前回はプログラムを講義に組み込み,受講者全員の同行を義務づけたが,団体行動となったために現地における参加者個人の自由度は狭められ「視察」 に終わった。一方,今回の現地学習は,実際の観光を体験するという目的のもと,有志学生による2名1組の行動となり自由度は大幅に高められた。いずれも一長一短の 現地学習法であるが,講義の内容に合わせて使い分ければ,大きな学習成果を上げることが分かった。現地学習を考える大学教員の参考になれば幸いである。

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