研究・地域連携・国際交流

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山形大学人文社会科学部叢書


大正・昭和期における東北の写真文化

石澤靖典・森岡卓司(共編著)

山形大学人文社会科学部附属映像文化研究所:2021年3月

〔内容紹介〕

 本書は大正・昭和前期における東北の写真史を、8篇の論考により考察した論文集である。
 中心となる「写真篇」の第1章から第6章は、平成30年12月に人文社会科学部附属映像文化研究所が主催したシンポジウムが母体になっている。執筆者は、東北6県の美術館で地域写真史を研究する学芸員であり、それぞれの県を代表する写真家(唐健吾、唐武、小西正太郎、石田喜一郎、千葉禎介、細江英公、小関庄太郎ら)と写真団体の活動を紹介しつつ、撮影された写真の風土性や時代性を検証している。その一方で、「中央」から離れた「東北」としての一体性や隣県同士の横のつながりをも視野に入れている点は、共同研究としての本書の大きな特色といえよう。また「文学篇」の第7章、第8章は、文学におけるリアリズムに軸足を置き直した上で、「東北」をめぐる同時代の写真の在り方を問うている。
 本書は、いまなお知られることの少ない東北の写真家を掘り起こし、それらに通底する「東北的」なるものを探る試みであり、映像文化研究所が平成27年に着手した研究プロジェクト「東北地方における写真文化の形成過程と視覚資料の調査研究」の成果報告書として上梓された。

Applied Studies on Ability of Analyzing English Sounds with Visualization

冨田 かおる

山形大学人文社会科学部叢書:2018年

〔内容紹介〕

This study investigates how Japanese learners of English pronounce two consonants, /s/ and /ʃ/, or /b/ and /v/, of English minimal-paired words whose corresponding words are English-based loanwords in Japanese and written in katakana. Frequency of spectral peak, duration, and intensity of these consonants produced by six Japanese learners of English and six native English speakers are measured with acoustic equipment. Among these phonetic features, significant differences in frequency of spectral peak between /s/ and /ʃ/ are observed. This holds true for both native English speakers and Japanese learners of English. There are also significant differences in duration between /b/ and /v/, and intensity between /ʃ/ and /s/, or /b/ and /v/. A hypothesis that distance between the values of these features for each paired consonants tends to be smaller for the Japanese learners of English than for the native English speakers is also verified. Implications for further research are briefly discussed.

独自開発データによる公益法人改革の推移分析

金子優子(編著)

山形大学人文学部叢書11:2017年12月14日

〔内容紹介〕

本書は、平成20年12月に行われた公益法人制度改革が公益法人の活動に与えた影響を分析し、明らかにするものである。そのため、基幹統計調査と行政部内で作成された業務報告との個票を完全照合して、法人活動の実態を明らかにするデータを整備するとともに、改革前と改革後の完全照合データを連結したパネルデータを作成・集計している。
公益法人制度改革の延長線上に、公益法人と類似する非営利法人である学校法人及び社会福祉法人についての制度改革が行われている。このような制度改革の方向性も踏まえ、本書では公益法人と学校法人、社会福祉法人及び社会医療法人との活動実態の比較も行っている。

地方観光の広域化に関する現状と今後の方向性

山田 浩久(編著)

山形大学人文学部叢書10:2017年3月

〔内容紹介〕

 本書は、山形大学のCOC事業「自立分散型(地域)社会システムを構築し、運営する人材の育成」事業における分野別研究の一つとして、編者が上山市で行った調査研究をまとめたものである。
 インバウンド旅行者の誘致は、国策として推し進められているが、東北地方は地理的位置、地形的制約に加えて東日本大震災に見舞われたこともあり、他地方よりもその進行が緩やかである。インバウンド旅行者の誘致を加速化するためには、小規模観光地が連携し、集団化することで情報発信力を強化する必要がある。本書では、同様の問題意識を持って活動している研究者の研究事例を紹介すると共に、学生参加型の調査を通して、上山市の観光資源と関連づけられる県内及び隣接県の観光資源を抽出し、地方観光を広域化させていくための施策を提案した。施策提案の主体は学生であり、上山市で行った現地報告会では地元関係者から高い評価を得ることができた。

A Model Based on F1F2 Values for Native and Non-native Speakers Speech

冨田かおる

山形大学人文学部叢書6:2014年9月15日

〔内容紹介〕

In this study, vowels of native English speakers and Japanese learners of English are studied phonologically and phonetically. Native speakers of language produce and perceive sounds on the basis of its phonological system that they have acquired. As for vowels in English and Japanese phonological systems the former has eleven vowels and the latter has five vowels. This phonological difference affects foreign language learners’ perception and production. It is estimated that some of Japanese learners of English who have acquired the five-vowel system perceive eleven English vowels on the basis of their native phonological system. Even for those in advanced levels, perception of vowels in casual speech may not be an easy task.

ロシアの南 近代ロシア文化におけるヴォルガ下流域、ウクライナ、クリミア、コーカサス表象の研究

中村唯史(編)

山形大学人文学部叢書5:2014年3月

〔内容紹介〕

 本書の対象地域がロシア帝国の版図に入ったのは18世紀後半-19世紀前半であり、ロシアが近代に足を踏み入れ、西欧に比して曖昧ながらも民族意識が芽生えて、「国民文学」が成立した時期と重なっていた。「自己」意識を持ち始めたロシア人の前に、「南方」は最大の「他者」として立ち現われた。
 その一方で「南方」はロシアの文明的・精神的な原故郷とも見なされた。キエフ・ルーシの故地ウクライナはロシアの源流と位置づけられ、コーカサスはノアの方舟やプロメテウス伝承の地、黒海沿岸は古代ギリシャ文化の痕跡を宿している。ロシア帝国の南方進出は、思想や文明論では、これら旧約的な世界や古代文化への回帰、自文化の源泉への遡行とも表象された。
 ロシアの文明論的視座の中で「南方」がどのように定位されたか、ロシア/ソ連の影響下に近代を成立させた「南方」の人々が、自らの立ち位置をいかに読み換えていったかを考察した8編からなる論文集。

観光資源の有効活用と中心市街地の再生

山田浩久

山形大学人文学部叢書4:2014年3月

〔内容紹介〕

 平成25 年度の大学COC 事業「地(知)の拠点事業」として山形大学の「自立分散 型(地域)社会システムを構築し、運営する人材の育成」事業が採択され,個別分野の研究として本研究が認可されたことは,地方都市の観光政策に当該地域の大学が参 与していく大きなきっかけになったと考える。地方都市の活性化に必要な観光は着地型観光である。それは,地域資源の掘り起こしに始まり,広域からの観光客のニーズ に対応しながら,地域全体の経済活性化を目指すものであり,社会環境や自然環境のアセスメントも多岐にわたる。着地型観光を考えることは,個々の観光客の満足度を 高めることや彼らを送り出す業種の利益を増大させることを起点とする発地型観光を考えるよりも,はるかに多くの視点が必要であり,個々の研究者が対応しきれるもの ではない。「課題解決に資する様々な人材や情報・技術が集まる、地域コミュニティの中核」として存在する大学が組織的に携わることによって,はじめて着地型観光の 研究は可能となり,その成果を地域に還元できると思われる。今後,同事業の進行とともに様々な分野から観光政策研究がなされ,体系づけられていくことだろう。
 本書は東北創生研究所のモデル都市研究として,筆者が2012 年から行ってきた観光動向調査の延長線上にあり,足掛け3年にわたる調査から得た知見をまとめたもの である。内容的には未だ中間報告の域を出ないが,ひとまず上山市を訪れる観光客の行動パターンを類型化することができたことで,同市の地域性に基づく観光政策の方 向性を示すことができたのではないかと考える。とくに,観光動向調査から導き出された,「若年者の行動パターンが,今後の上山観光に新しい動きをもたらす」という 仮説が,学生参加型の現地調査によって確認されたことは非常に大きな意義がある。 個々の地域の特性を理論よりも現地での観察や体験によって明らかにしていく「地誌学」という講義を利用しての現地学習は,平成24 年度に行った東松島市の視察に続 き2回目である。前回はプログラムを講義に組み込み,受講者全員の同行を義務づけたが,団体行動となったために現地における参加者個人の自由度は狭められ「視察」 に終わった。一方,今回の現地学習は,実際の観光を体験するという目的のもと,有志学生による2名1組の行動となり自由度は大幅に高められた。いずれも一長一短の 現地学習法であるが,講義の内容に合わせて使い分ければ,大きな学習成果を上げることが分かった。現地学習を考える大学教員の参考になれば幸いである。

山形大学YU-GP 現地学習を中心にした災害復興学の実践 -「地詩学」における取り組み-

阿部宏慈・山田浩久(著)

山形大学人文学部叢書3:2013年3月

〔内容紹介〕

 東日本大震災を教訓にして,記憶を希薄化させることなく,今後の防減災を含めた復興の在り方を考えいかなければならないとの考えから,山形大学では,2011年12月15日,宮城教育大学,福島大学と共に「災害復興学」を学長の共同声明という形で立ち上げた。さらに,2012年3月4日には,「災害復興学」の立ち上げシンポジウムを開催し,県内外からの関心が高まる中で今後の動向が注目されている。
 これらの状況を鑑み,人文学部では,2012年度後期開講科目の一つである「地誌学」において,「現地学習を中心にした災害復興学の実践」と題する教育プログラムを実施した。本書は,同講義の担当者が現地視察や住民との直接対話による災害復興学の実践過程を報告するものであり,学生の事後レポート82編,学生グループによる最終報告会資料6編を収録する。併せて,本書は,同講義がもたらした成果や作業上での課題も提示しているため,今後,新たに震災関連授業を計画する教員やそれを受講しようとする学生の指針にもなるはずである。
 なお,本教育プログラムは人文学部の統括教育ディレクターが中心となって企画され,2012年度における山形大学YU-GP制度の取り組みに採択された。

東日本大震災の地域経済への影響

戸室健作・殷勇・山口昌樹(著)

山形大学人文学部叢書2:2013年3月

〔内容紹介〕

 本書の目的は被災地の経済復興ビジョンを描くための基礎となる実態分析を企業経営、雇用、金融の3つの観点から実施することである。分析能力を地域に還元することで被災地に隣接する大学として震災後における東北地方の経済復興に幾ばくかの貢献を企図するものでもある。
 雇用については、まず震災以前から東北で貧困世帯、中でも就業貧困世帯(ワーキングプア)の割合が増大していた事実を解明した。そして、震災後の雇用状況を各種の統計資料を用いて明らかにすることによって、東北において広がっていた貧困に震災がどのような影響を及ぼしたのかを検討した。
 企業経営についてはサプライチェーンの断絶を調査対象とする。震災により日本が誇るサプライチェーンが大きな痛手を受け深刻な混乱に陥った。事例調査によって被災地企業のサプライチェーンがどんな脆さを抱えていたのかを浮き彫りにして改善策を提案した。
 金融については復興の大きな足かせとなっている二重ローン問題を取り上げる。地域金融機関が直面している現状をまず財務データから明らかにした上で、旧債務の整理や新債務の創出に関する政策が現実と齟齬を来していないかを調査、報告した。

邦銀のアジア進出と国際競争力

山口昌樹

山形大学人文学部叢書:2012年11月

〔内容紹介〕

 リーマンショックや欧州債務危機に苦しむ欧米系銀行を尻目に、邦銀は公的資金を完済した2000年代半ばから躍進を続けています。絶好調に見える邦銀ですが、海外、とりわけアジアにおいて欧米系銀行を凌駕する優位性を本当に発揮できているのでしょうか。
 この課題に答えるべく本書は主に2つの分析を行っています。1つはアジア諸国におけるメガバンクの競争力をX非効率性の計測から明らかにしたり、シンジケート・ローンやプロジェクト・ファイナンスといった金融プロダクト市場における競争上の位置づけを計量的手法によって特定する分析です。
 もう1つはアジアへの進出が顕著な地方銀行を取り上げ、中小企業の外進出支援に対して果たす役割を調査しました。この分析では地方銀行25行への電話インタビューを敢行してデータを収集しました。また、本年2月と7月には上海において現地調査を行い、地方銀行の駐在員事務所の実態について現場の行員にインタビューしています。
 本書は多国籍銀行分析の対象領域の拡張を主張する研究となっており、邦銀を軸に据えた多国籍銀行研究という分野の端緒を開くものです。

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