研究・地域連携・国際交流

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教員著書紹介


スピルバーグ その世界と人生

リチャード・シッケル 著 大久保清朗/南波克行 訳

西村書店:2015年12月

〔内容紹介〕

 『ジョーズ』『未知との遭遇』『E.T.』や『ジュラシック・パーク』『シンドラーのリスト』『プライベート・ライアン』など、数多くのヒット作を手がけてきたスティーブン・スピルバーグの映画を作品ごとに解説した本の翻訳をしました。著者であるリチャード・シッケルの解説のなかにスピルバーグ自身のコメントが多数収録されているのが貴重です。なにより、ヴィジュアルが豊富なのでページをめくっていくだけでも楽しめると思います。スピルバーグは「わたしの純粋な情熱であり、わたしの最大の喜び」(序文)だと述べていますが、読んでいくうちに、彼の情熱と喜びを共有できるだろうと思います。『スティーブン・スピルバーグ論』で一緒に仕事をした南波克行さんと翻訳でも一緒に仕事ができたことは光栄でした。

画像と知覚の哲学 現像学と分析哲学からの接近

小熊正久・清塚邦彦 編著

東信堂:2015年11月

〔内容紹介〕

 人間は幼児も大人も、「現物」を見るのに劣らず「画像」見て、わくわくしたり、感動したり、情報をえたりしますが、「現物」と異なる「画像」のなかに私たちはどのようにして「現物」を見ることができるのでしょうか。また、画像知覚も含む「知覚」とはどういうことなのでしょうか。こうした基本的かつ現代的な問題を山形大学に関係する研究者が中心になって、現象学と分析哲学の観点から考察した論集です。

デニス・ロバートソン

下平 裕之(翻訳)

勁草書房:2015年

〔内容紹介〕

 本書は、ケインズと同時代のケンブリッジ学派に属する経済学者デニス・ロバートソン(1890-1963)に関する最新の体系的著作であり、『経済学における偉大な思想家』シリーズの1冊として刊行された。本書は23章からなり、ロバートソンの生涯と主要著作・論文、そしてそれらの相互関係が詳細に検討されている。本シリーズは研究者以外の一般の読者も対象としているため、文章は平易であり専門用語についてもわかりやすい読み替えがなされるなどの工夫が行われている。
 本書の最大の貢献は、伝記的・文学的知見から従来理論史的な研究では言及されなかったロバートソンの経済学に関する新たな解釈を提示したことであり、彼の文学的手法との理論的分析との連関を明らかにしたことや、彼がケインズ革命を受容できなかった本質的理由を経済学の背後にある人間性に求めた点などが興味深い。

ヴェール論争: リベラリズムの試練

クリスチャン・ヨプケ(著) 伊藤豊・長谷川一年・竹島博之(訳)

法政大学出版局:2015年6月10日

〔内容紹介〕

 ヨーロッパ社会とイスラム移民の政治的・社会的な軋轢が増えている。本書はムスリム女性のヴェールを容認するイギリス、法律で禁止したフランス、キリスト教国家を前面に押し出すドイツの移民政策や受容と排除の問題を示す。著者はヴェールをアイデンティティを映す鏡ととらえ、自分とは何者かを直視し、どのような社会を持ちたいのか再考しなければならないと訴える。

社会統計学ベイシック

阿部 晃士(共著)

ミネルヴァ書房:2015年9月

〔内容紹介〕

社会調査データの統計分析についての考え方を基礎から学び、人文社会科学系の学生が情報化社会における市民的教養としての統計リテラシーを身につけることを目指したテキストです。実際の社会調査にもとづく具体的な分析例を用いて解説してあり、電卓を使って分析を体験しながら統計学的思考を学ぶことができます。また、自習もできるよう、豊富な例題と学習課題を用意してあります。

山形大学人文学部附属やまがた地域社会社会研究所ブックレット1 -地域社会連携教員の活動-

やまがた地域社会研究所編

山形大学人文学部:2015年3月

〔内容紹介〕

 本書は,2014年6月に設立されたやまがた地域社会研究所のブックレットであり,本学部教員の地域社会連携に関する活動を紹介する報告書である。前半は本学部教員の岩田浩太郎「歴史文化を活かした地域活性化事業」,下平裕之「長井市市民意向調査自由記述に関するテキストマイニング分析」,山本匡毅「山形県における航空機産業の新規参入・受注拡大支援」,山田浩久「東根市高齢化対策ビジネス研究会」を収録し,具体的な連携活動が報告されている。後半は,連携活動を行っている人文学部教員の活動リストが掲載されている。

Geography of Post-Growth Society

Masateru Hino and Jun Tsutsumi (editors) , Hirohisa Yamada (coauthor)

東北大学出版会:2015年3月

〔内容紹介〕

 本書は,Post-Growth期における日本の都市構造の変容を海外に向けて報告する学術書である。少子高齢化の進行に伴い,わが国の都市は単に都市域を空間的に拡大させるような成長から,都市機能を集約させ効率的な都市運営を促進させる「成長」への転換を迫られている。空間的拡大に代わるこの新たな都市「成長」は,都市の地域的な特徴に大きく左右されるため,その解明には個別事例研究の積み重ねが必要とされている。本書は,わが国の大都市圏域に関する論考9編,地方都市に関する論考4編によって構成され,人口,就業,住宅,地価等の観点から変わりゆく都市構造の実態が報告されている。
 本学の山田浩久は,10章のSpatial Characteristics of Land Evaluation in the Tokyo Metropolitan Area after Great East Japan Earthquake を担当した。同章は,Post-Growth期に入り,土地評価も大きく変化している中で発生した東日本大震災が東京大都市圏の地価形成に与えた影響をまとめたものであり,土地評価に関わる新たな視点の出現とそれによる問題点が指摘されている。

明治日本の文明言説とその変容

許 時嘉

日本経済評論社:2014年11月

〔内容紹介〕

 本書は東アジアの〈文明〉志向に内在する前近代的な様相を浮き彫りにすることで、近代日本の植民地統治の特性について再考を試みた一冊である。東アジアの中華思想支配、「文」を中心とする伝統的な文明概念と近代西洋の文明理解との融合と齟齬は、明治日本の近代国民国家の成立と海外膨張、そしてはじめての植民地台湾経営の大きな特徴をなしていたと考えられる。明治期の各場面において議論、利用、再現されたそれらの文明言説を考察することで、前近代と近代のつなぎ目、そしてイデオロギーと実体統治の間に生じた多彩な変化と多様な可能性を提示してみたい、というのが本書の意図である。タイトルに副題を入れるとすれば、「植民地台湾の統治実態との連動」というフレーズがふさわしいだろう。
 本書は2010年11月、名古屋大学大学院国際言語文化研究科に提出した博士論文『明治日本の文明言説と植民地統治――台湾統治をめぐって』に大幅に加筆修正を加えたものである。刊行にあたって、平成26年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費「学術図書」)、および富士ゼロックス小林節太郎記念基金出版助成金の交付を受けて出版された。

A Model Based on F1F2 Values for Native and Non-native Speakers Speech

冨田かおる

山形大学人文学部叢書6:2014年9月15日

〔内容紹介〕

In this study, vowels of native English speakers and Japanese learners of English are studied phonologically and phonetically. Native speakers of language produce and perceive sounds on the basis of its phonological system that they have acquired. As for vowels in English and Japanese phonological systems the former has eleven vowels and the latter has five vowels. This phonological difference affects foreign language learners’ perception and production. It is estimated that some of Japanese learners of English who have acquired the five-vowel system perceive eleven English vowels on the basis of their native phonological system. Even for those in advanced levels, perception of vowels in casual speech may not be an easy task.

Peruvian ArchaeologyVolume 1

Tadaaki Kitagawa, Masato Sakai, and Yuichi Matsumoto(編)

山形大学出版会:2014年3月

〔内容紹介〕

 Peruvian Archaeologyは山形大学人文学部附属ナスカ研究所が発刊した、ペルーの考古学に関する国際学術雑誌である。この出版はナスカ研究所の研究活動の一環であり、研究所の学術成果を国際的に発信し、研究所を諸外国の研究者が交流する拠点として機能させることを目的としている。
 Editorial Advisory Boardにはアメリカ、日本、ペルー、ドイツ、イタリアの研究者が名を連ねており、それぞれの豊かな研究経験に基づく助言が本誌の編集に反映されることとなった。
 出版に際しての言語は英語、スペイン語を中心としており、査読を通じて採択される論文のレベルを高く保つことができると考えている。
 創刊号では、計2本の英語論文を採択した。内一本は、イェール大学(米国)の研究者によるペルー北海岸の漁村(紀元前1800-1200年)に関する論考であり、もう一本はテュレーン大学(米国)と山形大学の研究者によるペルー中央高地の神殿(紀元前800-500年)の出土遺物を対象とした論考である。今後年一回の刊行を予定している。

Centros de Líneas y Cerámicas en las Pampas de Nasca, Perú, 2010.

Masato Sakai, Jorge Olano, Yuichi Matsumoto y Hiraku Takahashi(共著)

山形大学出版会:2014年3月

〔内容紹介〕

 本書は世界遺産ナスカの地上絵および土器に関する学術書(スペイン語)であり、特に地上絵の大部分を占める放射状直線の中心点に焦点を当てたものです。先行研究では、こうした中心点はナスカ台地に62点建設され、そこにはナスカ期(前200~600年)以降の土器が分布していることが主張されてきました。しかし、2010年の山形大学の調査によって、中心点は100点以上あり、中心点での活動がパラカス後期(前400~200年)から2000年間にわたることが判明しました。本書では、地上絵の分布と年代に関する山形大学ナスカ調査団の研究成果を公表するとともに、それを支える実証的なデータ(土器の分布・形態・時期)を提示しています。
 これまでのナスカの地上絵に関する議論のほとんどは、こうした基礎データを提示することなく展開してきました。しかし本書の出版によって、山形大学ナスカ調査団の研究の手法および方向性を示すとともに、各国の研究者と基礎データを共有することが可能になったと言えるでしょう。

ロシアの南 近代ロシア文化におけるヴォルガ下流域、ウクライナ、クリミア、コーカサス表象の研究

中村唯史(編)

山形大学人文学部叢書5:2014年3月

〔内容紹介〕

 本書の対象地域がロシア帝国の版図に入ったのは18世紀後半-19世紀前半であり、ロシアが近代に足を踏み入れ、西欧に比して曖昧ながらも民族意識が芽生えて、「国民文学」が成立した時期と重なっていた。「自己」意識を持ち始めたロシア人の前に、「南方」は最大の「他者」として立ち現われた。
 その一方で「南方」はロシアの文明的・精神的な原故郷とも見なされた。キエフ・ルーシの故地ウクライナはロシアの源流と位置づけられ、コーカサスはノアの方舟やプロメテウス伝承の地、黒海沿岸は古代ギリシャ文化の痕跡を宿している。ロシア帝国の南方進出は、思想や文明論では、これら旧約的な世界や古代文化への回帰、自文化の源泉への遡行とも表象された。
 ロシアの文明論的視座の中で「南方」がどのように定位されたか、ロシア/ソ連の影響下に近代を成立させた「南方」の人々が、自らの立ち位置をいかに読み換えていったかを考察した8編からなる論文集。

観光資源の有効活用と中心市街地の再生

山田浩久

山形大学人文学部叢書4:2014年3月

〔内容紹介〕

 平成25 年度の大学COC 事業「地(知)の拠点事業」として山形大学の「自立分散 型(地域)社会システムを構築し、運営する人材の育成」事業が採択され,個別分野の研究として本研究が認可されたことは,地方都市の観光政策に当該地域の大学が参 与していく大きなきっかけになったと考える。地方都市の活性化に必要な観光は着地型観光である。それは,地域資源の掘り起こしに始まり,広域からの観光客のニーズ に対応しながら,地域全体の経済活性化を目指すものであり,社会環境や自然環境のアセスメントも多岐にわたる。着地型観光を考えることは,個々の観光客の満足度を 高めることや彼らを送り出す業種の利益を増大させることを起点とする発地型観光を考えるよりも,はるかに多くの視点が必要であり,個々の研究者が対応しきれるもの ではない。「課題解決に資する様々な人材や情報・技術が集まる、地域コミュニティの中核」として存在する大学が組織的に携わることによって,はじめて着地型観光の 研究は可能となり,その成果を地域に還元できると思われる。今後,同事業の進行とともに様々な分野から観光政策研究がなされ,体系づけられていくことだろう。
 本書は東北創生研究所のモデル都市研究として,筆者が2012 年から行ってきた観光動向調査の延長線上にあり,足掛け3年にわたる調査から得た知見をまとめたもの である。内容的には未だ中間報告の域を出ないが,ひとまず上山市を訪れる観光客の行動パターンを類型化することができたことで,同市の地域性に基づく観光政策の方 向性を示すことができたのではないかと考える。とくに,観光動向調査から導き出された,「若年者の行動パターンが,今後の上山観光に新しい動きをもたらす」という 仮説が,学生参加型の現地調査によって確認されたことは非常に大きな意義がある。 個々の地域の特性を理論よりも現地での観察や体験によって明らかにしていく「地誌学」という講義を利用しての現地学習は,平成24 年度に行った東松島市の視察に続 き2回目である。前回はプログラムを講義に組み込み,受講者全員の同行を義務づけたが,団体行動となったために現地における参加者個人の自由度は狭められ「視察」 に終わった。一方,今回の現地学習は,実際の観光を体験するという目的のもと,有志学生による2名1組の行動となり自由度は大幅に高められた。いずれも一長一短の 現地学習法であるが,講義の内容に合わせて使い分ければ,大きな学習成果を上げることが分かった。現地学習を考える大学教員の参考になれば幸いである。

東北発 災害復興学入門 巨大災害と向き合う、あなたへ

清水修二・松岡尚敏・下平裕之(編著)

山形大学出版会:2013年9月

〔内容紹介〕

 山形大学出版会から災害復興学テキスト『東北発災害復興学入門』が刊行されました。(定価:本体800円+税)
 本テキストは、南東北三国立大学(宮城教育大学・福島大学・山形大学)が東日本大震災後の復旧・復興を支援し、新しい東北を創り上げていくために、人的交流と教育の連携を深めてきた成果として発刊されたものです。
 人文学部からは、「序論人間の復興」を下平裕之教授、「第1章災害に強いコミュニティづくり」を北川忠明教授(学部長)が執筆しています。

東北近代文学事典

日本近代文学会東北支部編(編集委員:森岡卓司他)

勉誠出版:2013年6月

〔内容紹介〕

 東北六県の近代文学の達成を一望する初の事典。
 文学史上に残る文豪から現在活躍中の作家まで、800を超える人名に加え、「疎開と文学」「東日本大震災と文学」など、地方の特色を盛り込んだ多くの項目を収録する。総ページ数825。
 森岡は編集委員の他、「近代作家と東北(山形)」など10項目を執筆。人文学部からは、伊藤豊が「外国人が見た東北」を寄稿、また、奥村淳(元人文学部教授)、阿部宏慈(元人文学部教授、現山形大学理事)も項目執筆で参加。

山形大学YU-GP 現地学習を中心にした災害復興学の実践 -「地詩学」における取り組み-

阿部宏慈・山田浩久(著)

山形大学人文学部叢書3:2013年3月

〔内容紹介〕

 東日本大震災を教訓にして,記憶を希薄化させることなく,今後の防減災を含めた復興の在り方を考えいかなければならないとの考えから,山形大学では,2011年12月15日,宮城教育大学,福島大学と共に「災害復興学」を学長の共同声明という形で立ち上げた。さらに,2012年3月4日には,「災害復興学」の立ち上げシンポジウムを開催し,県内外からの関心が高まる中で今後の動向が注目されている。
 これらの状況を鑑み,人文学部では,2012年度後期開講科目の一つである「地誌学」において,「現地学習を中心にした災害復興学の実践」と題する教育プログラムを実施した。本書は,同講義の担当者が現地視察や住民との直接対話による災害復興学の実践過程を報告するものであり,学生の事後レポート82編,学生グループによる最終報告会資料6編を収録する。併せて,本書は,同講義がもたらした成果や作業上での課題も提示しているため,今後,新たに震災関連授業を計画する教員やそれを受講しようとする学生の指針にもなるはずである。
 なお,本教育プログラムは人文学部の統括教育ディレクターが中心となって企画され,2012年度における山形大学YU-GP制度の取り組みに採択された。

東日本大震災の地域経済への影響

戸室健作・殷勇・山口昌樹(著)

山形大学人文学部叢書2:2013年3月

〔内容紹介〕

 本書の目的は被災地の経済復興ビジョンを描くための基礎となる実態分析を企業経営、雇用、金融の3つの観点から実施することである。分析能力を地域に還元することで被災地に隣接する大学として震災後における東北地方の経済復興に幾ばくかの貢献を企図するものでもある。
 雇用については、まず震災以前から東北で貧困世帯、中でも就業貧困世帯(ワーキングプア)の割合が増大していた事実を解明した。そして、震災後の雇用状況を各種の統計資料を用いて明らかにすることによって、東北において広がっていた貧困に震災がどのような影響を及ぼしたのかを検討した。
 企業経営についてはサプライチェーンの断絶を調査対象とする。震災により日本が誇るサプライチェーンが大きな痛手を受け深刻な混乱に陥った。事例調査によって被災地企業のサプライチェーンがどんな脆さを抱えていたのかを浮き彫りにして改善策を提案した。
 金融については復興の大きな足かせとなっている二重ローン問題を取り上げる。地域金融機関が直面している現状をまず財務データから明らかにした上で、旧債務の整理や新債務の創出に関する政策が現実と齟齬を来していないかを調査、報告した。

スティーブン・スピルバーグ論

南波克行編著・大久保清朗(共著)

フィルムアート社:2013年2月

〔内容紹介〕

 <リアルとアンリアル>、<戦場と夢想>、<大人と子供>の狭間で、常に世界とコミュニケーションをとってきた映画作家スピルバーグ。その複雑な作家性を多様な視点から論じた初の論集。共著者の大久保はスピルバーグ映画の主要なテーマのひとつである子供を中心に論じた「夜の暗がりの寄る辺なさとともに──スピルバーグ映画の子供たち」を寄稿している。

地方都市の持続可能な発展を目指して

北川忠明・山田浩久(編著)

山形大学出版会:2013年2月

〔内容紹介〕

 地域活性化のためのヒントがここに!
 長井市民と市役所職員の人材育成を目的に行われた「ながい市民未来塾」。その中での授業や現地視察などの内容をテーマに即して編集。地方都市の持続的発展に関心を持つ、自治体職員・NPO・市民に贈る一冊。

甦る『ゴンドラの唄』 ─ 「いのち短し、恋せよ、少女」の誕生と変容

相沢直樹

新曜社:2012年11月

〔内容紹介〕

 「♪いのち短し,恋せよ,少女(をとめ)」と歌い出す『ゴンドラの唄』(吉井勇詩,中山晋平曲)は,元々大正時代の新劇の劇中歌として生まれた。その詩は森鴎外訳の『即興詩人』の中の俚謡をもとにしたとされるが,この歌の誕生や出自に関しては,実はきわめて複雑な背景がある。本書は『ゴンドラの唄』をめぐって複雑に絡み合った幾筋もの糸を丹念に解きほぐし,歌の背後にある《カルペ・ディエム》(いまを生きよ)の詩想の系譜を浮き彫りにして行く。
 また,黒澤明の映画『生きる』の主題歌として用いられることによって,『ゴンドラの唄』の詩句の意味が変容したことを明らかにするとともに,現代文化の中で(それも意外にもサブカルチャーにおいて)聞こえる『ゴンドラの唄』のこだまに耳をすまし,この歌の受容の歴史を,豊富な例によって生き生きと描き出す。

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